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ULTRASONE 最近まで全然興味なかったメーカーです。そもそも自分の中では、作ったような音でそれを売りにしているメーカーってイメージ。金属コーティング好きだよねこのメーカー。私は嫌いなので端から選択肢に入りません。 Signature PUREに興味が出たのは、価格でSRH1540のレビュー見てたら、 「Signature PUREがあまりに凄すぎてSRH1540がゴミになったわ。もう売却決定しました。」「これが4万円の差でしょうか?Signature PUREの圧勝です!」 というレビューを見たからです。 私は 「ふーん。たしかULTRASONEて10万くらいでDJ型のヘッドホン出してたよね? で、これはそのシリーズの新型なのかな。4万高くても、その差額が問題なくなるくらいの音質差なのかー。」 と思って、YOUTUBEに録音してくれてる人がいたので聴いてみたんですよ。そしたらかなり音が良い。 ハイ落ちな感じな音だけど、ボーカルの歪感が少なくて聴きやすい感じ。音色が良い。音楽的な感じ。 音色に関してはT3-01やATH-AWASよりも良いんじゃないか?これ。録音だから正確なことは言えないけど。まぁ、音楽性が高いと言っても、あくまで「音に癖があるけど音楽的」ってレベルで、「ノイズを極限まで減らして原音忠実。癖の極限までの排除。」ってレベルではありません。それでも音色が良いのは出ているノイズが音色のロスが少ない類のものなのでしょう。褒めるだけのことはあるな。 あとちょっと癖強すぎかと思うけど、この辺りは再生環境やエージングで是正できそうな雰囲気だ。他の人の動画(今は消えてる)だと、中華製の高めのアンプで鳴らしてたけど、かなり自然な音が鳴っていた。こうしてFidelio X3と共に私の欲しいものリストに入るヘッドホンになったのでした。 それで、最後に価格を調べてみたら3万くらいだった。。。 「そっちの4万円かー!」 「10万の癖にとてつもなく安っぽいなと思ったけど、ULTRASONEってメーカーだから全然違和感なかったわー。」 「3万であの音ならみんな褒めるわけだ。こりゃ聴く前から100点確定だな!これはもう勝ち試合!約束された勝利!」 ・・・というわけでとりあえず買ってみました。 全然エージングしていませんが、録音から想像してたよりも良い音で鳴っている。録音では、かなりハイ落ちに聴こえましたが、実試聴ではハイハットの音なども鮮明に聞こえてきます。ボーカルやピアノの音も比較的ナチュラルだし、まぁ確かに低音盛っているんだけど、それ以外は割と普通の音だな。これを不自然だというなら、その人が求めている音がこれよりはるか上の再生能力を求めているということになるでしょう。このヘッドホンの再生能力だとこれくらいの自然さが限度だと思います。つまりこのSignature PUREの音は能力の範囲内でよく纏められているということです。 ・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 初めは曇っていてK701よりも解像度が低かったのですが、数時間鳴らすと曇りが取れてきて、K701はもとよりK812レベルの音、もしくは少し上回るくらいの音になってびっくりした。信じないかもしれないけど素直に評価したらそうなるんだよね。 テンプレ評価だと Signature PURE_3時間の再生エージング HD120で評価 傾向は基本ニュートラルだが、低音盛っていて、やや曇り傾向。詰まり感はほんのわずかにあり。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから1.0歩ほど超えてきている。ニュートラルでもなく、やや曇っている状態では普通ここまで行かない。これは音色が良いことに起因しているのだろう。K812に匹敵するレベルの音色の良さ。 解像度はK701(1309時間ランダム再生+3559時間の通常の再生エージング,+1160段)の+400段程上。+1560段の解像度。signature pureはK701の134%の解像度と言うことになる。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) 音質が近いK812と比べると、signature pureは解像度ではK812(6985時間ランダム再生+2519時間の通常の再生エージング,+1610段)の-50段ほど下。比べてちょっと音がつぶれているかな?程度。音色もほぼ互角でしょう。だけど、Signature PUREの方が良いと判断しています。それは、ボリューム感ではsignature pureが明らかに優れていて、低音も盛っているからノリが良い。聴いてて楽しいのはsignature pureの方。とても音楽性の高いヘッドホンだと思う。(※1) あと傾向としてはやはり低音を盛っている以外はナチュラルに聴こえる。これをナチュラルでないというなら、K701,K812,nighthawk carbonもナチュラルでないと言わざる得なくなってしまう。そりゃsound improver 3を鳴らしたSRH1540と比べたらナチュラルじゃないけど、一般的な評価基準でならナチュラルな方だろう。他の手持ちでSignature PUREより癖が少ないと言えるのはHD600くらいですね。HD600と比べても不自然に感じないレベルなのでモニターとして使える素養はあるでしょう。癖の少なさはHD650並かそれよりちょっと下がるくらいでしょうか。直接比べていないので、確実なことは言えませんが。少なくともK701,K812,nighthawkよりは癖が少なく自然なので、殊更不自然と言うほどの個性は持っていないでしょう。まぁ、再生環境によるのかもしれませんが、HD120で再生する限りはそうですね。 それから、S-LOGICの効果は一切分からない。もしかしたら、S-LOGICを外したら効果が分かるのかもしれないが、他のヘッドホンと明らかに違うなという感じはしない。頭外定位はSRH1540でも簡単にできるし、SRH1540の方が再生能力が高い分ドライバーへの音の張り付き感は遥かに少ない。むしろ頭内定位感が多いのはSignature PUREの方。 そもそも音場についてはふわっとした感覚で使われてて分かりにくいですよね?私も他人がどういう意味合いで使っているのか分からないです。でも原理を考えると、少しは分かってくるかもしれません。ここでは私の考えを書いておきます。 オーディオにおける音場は「音源に含まれる空間情報の再現度」と「部屋の広さやスピーカーの位置や角度」によるものです。 重要なのは「音源に含まれる空間情報の再現度」のほうで、再現度を上げていくと、ボーカルや楽器の定位する位置や距離が全く同じ位置に収斂していきます。もちろん音源を変えたら、定位する位置は変わります。だけど同じ音源なら、ヘッドホンやイヤホンを変えてもボーカルや楽器の定位する位置や距離は全く変わりません。「音源に含まれる空間情報の再現」なのだから同じ位置に収斂して当たり前なんですよね。私はこれをカンストと言っています。 次に効きそうなのが、「部屋の広さやスピーカーの位置や角度」ですよね。だけど、ヘッドホンだと耳元にユニットがある事実はどうしようもないし、イヤパッドの内部空間にも限りがある。スピーカーの角度を変えたりすると音像の広がり方が変わるから、ユニットの角度を弄るのも効果があると思うのだが、「音源に含まれる空間情報の再現」と比べると自分の感覚ではそこまでの差が出ないものと思います。確かにミクロンレベルでは違いはあるかもしれませんが、「所詮はヘッドホン」の域を出ないでしょう。 「部屋の広さやスピーカーの位置や角度」に関してはヘッドホンである限り大差はでないし、「音源に含まれる空間情報の再現度」を十分確保できていれば、ボーカルや楽器の定位する位置や距離が全く同じ位置に収斂するんだから、音場なんて拘るだけ無意味だと思うようになりました。今は音楽性の方が上げられる余地が全然大きいと感じています。 ヘッドホン業界では音場は広ければ広いほど優れているというイメージが先行していますが、あまり惑わされないほうが良いと思います。最近気づいたんだけど、ヘッドホン界隈の音場の広い狭いは0.0000001mmの微粒子レベル違いを指して「こっちのヘッドホンの方が広い!」とか言っているようなんです。ならば、数cm単位もの違いがあろうものなら「広大な宇宙空間のような音場が広がる」と表現してしまうでしょう。でも、それって本当に拘る意味あるんですか? 正確にはどのヘッドホンも音場が全く同じと言っているわけではなく、私にも違いはわかります。Signature PUREとK812ではK812のほうが横の広がりが良いと言えます。1-2cmくらいな。でも数m違うならまだしも1-2cmの違いに拘っても意味がないと言うことです。 S-LOGICはユニット前のディフューザーのようなものだから「部屋の広さやスピーカーの位置や角度」に類するもので、空間情報の再現度を上げるものではないでしょう。ヘッドホンによる後天的な情報付加で、スピーカーを耳元でなく前方にあるよう錯覚させたいというものだと思いますが、S-LOGICでもスピーカーの近くに定位するような楽器は、耳元のヘッドホンのユニット近くに定位するので、ユニットを前方にあるよう錯覚させることはできていないように感じます。ヘッドホンにおける前方定位はスピーカー再生で言うとスピーカーとスピーカーを繋ぐ軸線よりも奥側に定位するような楽器やボーカルに関しては、ヘッドホンの外側に追いやることができるというものです。ただし、スピーカー再生においてスピーカーユニットの近くに定位するような楽器は、ヘッドホンでもユニットの近く、つまり耳元に定位するということになります。この原理を考えるとヘッドホンでは自然な音場は実現不可能ということになります。 S-LOGICもヘッドホンの定位でスピーカーのような定位は実現できていません。現状ではS-LOGICの効果は分かりませんが、逆に悪影響も感じません。使い続けたら他のヘッドホンとの違いも分かってくるかもしれませんから、何かしら違いを感じたら追記しようと思います。 HD650は断線して聴き比べられないが、鳴らしきったHD650の音にはまだ及んでいないが、それに近いレベルの音が出ているので、このままエージングが進めばHD650を超えるのはほぼ確実だろう。(超えない可能性もあるけど。) これはとんでもないヘッドホンだな!私のSRH1540はsound improver 3のテストに使っていて、K812の倍くらい音良いので、Signature PUREでも勝てないんだけどね。だけど普通の人がこのレベルでSRH1540を鳴らせるはずないから、おそらくエージングを進めたK701以下の音しか鳴ってないでしょう。そう考えると、開封後数時間でこんだけ鳴っていたら、SRH1540がゴミ扱いされるのも頷ける。というかエージング進めたK701やK812でも勝てないからびっくりだわ。 私は以前「HD650はみんなが買うべきヘッドホンだ」と言った。Signature PUREはエージングも進んでいないのに、これに近い音質が出ているので、最終評価を下すまでもなく「Signature PUREはみんなが買うべきヘッドホンだ」と断言できる。HD650以来の伝説的なヘッドホンの登場と言っていいだろう。そう言えばHD650もSignature PUREもドイツのメーカーのヘッドホンだ。これがドイツの技術力。。。どいつのぎじゅつりょく。。。どいちゅのぎじゅちゅりょく。。。 ※1 私は音色が良いとか音楽性が高いと言う言葉をよく使いますが、もちろんこれは音の良し悪し、再現性の話をしています。ヘッドホン固有のキャラクターや演出が好きという意味ではありません。指摘おじさん。指摘おじさんに怒られるので一応言っておきます。 もう勝ち確ヘッドホンですが、2000時間、4000時間ほどエージングしたら再評価します。 20240715_追記_3026時間エージング エージング時間が3026時間に到達したので、一区切りとして記録しておく。 初めこの記事を書いていた時に、同じ曲をずっと鳴らしっぱなしにしていたら、音質の低下を感じたので、「このヘッドホンは音質を悪くするエージング法なら、どの程度音悪くなるのかな?」と思ったので、いじわるをして一番音が悪くなる方法でエージングしてみました。sand stormだけをひたすら流しました。 私の予想では「ひたすら音が悪くなって終わり」という予想だったのですが、K701以下の音質になったりH600やK812並の音質に回復したり予想外の挙動を示したので、しばらくsand stormだけ流してみることにしました。sand stormなのは「このヘッドホンはEDMが合う!EDM!EDM!EDM!」と言われていたから。 なので、ランダム再生エージングした時より音質が良くないと思われます。そこを勘案して読んでくださいね。 2024/07/02_2714-13時間_13時間のランダム再生+2701時間の1曲(sand storm)リピートエージング HD120で評価 これは2688時間時と比べて、クリアになった。解像度で言うとK812(6985時間ランダム再生+2519時間の通常の再生エージング,+1610段)の122%程度、1964段ってところだろうか。 傾向は低音盛り傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルををボーダーから1.70歩ほど超えてきている。概ね鳴らしきった時のHD650と互角くらいだろうか。 (エージング時間2000時間以降の)振れ幅で言うと音質的にはK812よりちょっと良いレベルから鳴らしきったHD650と互角レベルくらいの間で揺れ動く感じ。解像度で言うとK812の105〜130%くらいで揺れるみたいな感じ。 この評価は初期のころと大差ないし、実は347時間の1曲(sand storm)リピートエージング時にHD650を超えているという評価をしているので、3000時間程度のエージングによってピーク時よりも音質が若干低下しているとも言えます。3000時間時でK812よりも若干良い〜HD650と互角と評価しているけど、それでも音色はピーク時よりも悪くなっていると思う。 では、1曲(sand storm)リピートエージングは音質を低下させる効果があったか?と言われるとこれについてはYESだと思う。ただし、このヘッドホンに関しては予想よりも音質は低下しなかった。たぶん振動板素材が良いってことだろうな。 次に3000時間の長時間再生は効果があったか?に関してはこれもYES。確かに3000時間鳴らしたからって大して音良くなってないんだけど、エージング時間が長くなっていくと音質の振れ幅は小さくなっていくし、大体2000時間超えたあたりから安定してくる感じなので。それでもピーク時の音質には劣るのだから、1曲(sand storm)リピートエージングが悪い方向に効いてきているのでしょう。時間さえかければ良いということではないということです。 ただ同じ音源を流しているのに音質が良くなったり悪くなったり振れる原因は分からなかった。条件は全く同じなんだけどな。 個人的にはもう気が済んだので後日ランダム再生エージングした時の評価も載せる予定です。 まぁ、このヘッドホンは褒めるのは確定で、 「これが価格差9万!なんでしょうか?この音質差は!AKGのフラッグシップが完敗なのです。」 とでも書くのだろうけどね。 一番音が悪くなるだろうエージング法でK812よりも若干良い〜鳴らしきったHD650と互角というレベルだからね。。。戦闘力は間違いなくあるよ。 ■このヘッドホンの良くない点 良くない点が3つ ・掛け心地 掛け心地はHD650,HD600の方が良い。側圧は似たようなものなのだが、イヤパッドの穴がSignature PUREの方が小さく、長時間の装着では耳たぶへの負担が大きいようだ。耳が痛くなってくる。まるで耳乗せタイプにしたHD650のよう。 ・スライダー機構 ヘッドバンドのアジャスター機構もいまいち。ロックが甘く掛け外しを繰り返すと、いつの間にかズレているので毎回調整が必要。この点はSRH1540やDT880E 600でもあった問題点だ。 HD600/650のように、ずれないようロックをきつくするか、K812のように物理的なロック機構を設けてほしい。 ・カールコード カールコードが重たい。カールコードいらないと思う。せめてアンプに近いとこをカールさせれば、重く感じないんでけど。でも音質考えたら両出しケーブルのほうが良いな。片出しケーブルは左右の等価性がなくて気持ち悪い。 あと、ケーブル関係で言うと本体側のプラグが奇麗に回り切らなくて、中途半端にしかロックが掛からない。そのくせサードパーティーの自作プラグ買って取り付けてみたら、きちんと回って奇麗にロックされる。純正のくせに設計ミスとしか思えない精度の悪さだ。 ■鳴らしきるについて HD650では音楽の良さを引き出すのに再生機器を選ぶと評したが、Signature PUREは再生機器を選ばないようだ。例えばHD120とiDSD Diabloを比べると、音楽の良さを引き出す音楽性はHD120の方が上と評価しているし、それは変わらないのだが、iDSD Diabloで再生しても結構いけるじゃんと思ってしまう。なんならエージング用に使っているDAP(iAUDIO7,相当音が悪い)でも結構いい音で鳴ってしまう。iAUDIO7だと音がかなり濁るから、それはちょっと言い過ぎかもしれないが、iAUDIO7の音の悪さを考えると相当に音楽的で良い音で鳴っていると言って良い。HD650やHPT-700だとここまで良い音は出ない。というよりアンプの癖が気になってここまで高い音楽性は引き出せないので、ここはSignature PUREの特長と言っても良い。 再生環境が悪くてもそこそこの音が出せるというと、環境追従性が悪いとか限界性能が低いとかネガティブなイメージに捉えられることがあるかもしれませんが、Signature PUREには当てはまりません。Signature PUREは演出でよく聴かせているのでなく、再生能力の高さで聴かせている。そういう音がしています。 確かにSignature PUREは低音盛っているし、フラットな音ではありません。どちらかというと周波数特性上は癖のあるヘッドホンでしょう。だけど、ただ低音盛っているだけのヘッドホンではこの音はまず出ません。「原音忠実を目指していけば、フラットでニュートラルな音になる。」というのは正しいのですが、では「聴感上フラットでニュートラルな音ほど、より原音忠実性が高いのか?」と言われたら、必ずしもそうではありません。ヘッドホンは音楽成分以外のノイズを大量に放射していますから、ノイズ込みでフラットでニュートラルに聴こえてもノイズによるロスが大きければ再現性なんてあったものじゃないんですよね。イコライザーでいくら調整しても音良くならないのも、見かけ上の周波数特性を弄ったところでこういったノイズ成分は減らせないというのが、根本的な問題としてあります。音のディティールをマスキングしているノイズ成分を減らさない限り再現性を上げることはできないのです。 そこいくとSignature PUREは確かに癖あるけど、その再現性の高さからHD600のような下手なフラット系ヘッドホンより原音忠実性が高くまともな音に聞こえます。 Signature PUREは多少の癖があっても、それが正しい音だと思わせるような説得力のある音が出ます。なので、再生機器の多少の癖は吸収できるし、それでいて説得力のある音が出せる。言い換えると、音楽性の劣るアンプで鳴らしても、Signature PUREは音楽性の塊と言えるくらい再生能力が高いので、アンプの多少の不得手は補ってしまえるという感じです。アンプの多少の能力不足は簡単にカバーできてしまえるくらい高い性能を持っている。。。これはもう無敵のヘッドホンかな。 ■S-LOGICについて 暫く聴きこんでみましたが、やはりS-LOGICの効果は一切分かりませんでした。「さすがS-Logic!密閉型なのに音場が広い!」というレビューを見るので人によっては効果はあるようなのですが・・・ S-LOGICとはどういった技術なのか?サイトには 最新技術S-Logic 3テクノロジー ヘッドホンでより自然なリスニング環境を提供する「3次元サウンド・ローカライゼーション」。 ULTRASONEは、過去30年以上にわたり、自然なサラウンドサウンド再生のために、あらゆる側面と細部に至るまで、洗練、調整し完璧なものにするために、広範な研究開発を行ってきました。 ご存知のように、これらは演奏の感動をヘッドホンで伝える品質に大きな影響を与えます。 ULTRASONEの情熱は、独自のS-Logic技術により、音や音楽の微細なニュアンスや記録を再現することにあります。最新テクノロジーとなるS-Logic 3は、自然な空間効果に反映された革新的なデザインに基づいています。プロのスタジオモニターとは事実上切り離せないリスニング体験であり、ラウドスピーカーとは異なり、部屋の音響特性に左右されません。 DDF (Double Deflector Fin)技術 DDFはS-Logic 3テクノロジーの一部として特許出願中の最新技術です。音場の中に特別に配置され、音のイベントの強さがセグメント化されます。これにより、指向性のある中高域の信号成分はほとんど変化せず、低い中低域が部分的にマスキングされて指向性を持ち、その面的な出口分布が変化することで、S-Logic効果がさらに洗練されます。この重要な機能により、リファレンススタイルのスタジオサウンドを得ながら、開放感を向上させることができます。DDFは、多層構造のステージを作り出し、より大きなサウンドの幅、ディテール、深さを実現します。空間のイメージが自然に現れ、分離感と透明感に優れています。振動板の中心部はほとんど影響を受けませんが、関連する低周波の音場はDDFの周りを流れなければならず、変化が生じます。この結果、リスナーにとっては、よりリニアな音の感覚が得られ、プロのユーザーにとっては特に重要な信号知覚が強化、奥行きと距離感が大幅に改善されます。このS-Logic 3技術により、ULTRASONEは自然な立体感を生み出す完璧なナチュラルサラウンドサウンドへと大きく前進しています。 と内容が有るようで無い、ぼかした言い方しかされていませんし、「プロのユーザーにとっては特に重要な信号知覚が強化、奥行きと距離感が大幅に改善されます。」とあるので、もしかしたら音源の空間情報を知覚しやすくする効果があるのかもしれません。 そうであるなら初めから空間情報を知覚できる人間にとっては意味がないものだし、言うなれば自転車の補助輪みたいなものかと思います。 ただ、ヘッドホンでスピーカーのような音場を再生するというのは、自転車の例えで言うとETの空飛ぶ自転車を求められているようなものです。そこに補助輪付きの自転車持ってきても意味がないでしょう。むしろ自転車に乗れる人間にとっては補助輪は邪魔でしかないし。なので、人によっては効果があるのかもしれないけど、過大な期待はしないほうが良いとは思います。効果があると主張している人も空飛ぶ自転車レベルで効果があるとは思っていないでしょうし、「違いはある。違いはあるがcmにすると実は大した差はない。」と言ったところでしょう。そもそもそのcmレベルでK812に負けちゃってるので、私にはこの技術がすごいものと実感できないのよね。 20250110_追記_トータル7043時間エージング(4017時間のシャッフル再生)。 シャッフル再生の時間が4000時間を超えたので追記。「長いので読むのがめんどい人はまとめを見てね」と言いたいが今回はなぜかまとめが長い。要約すると「Signature PUREはヤンキー車のドゥンドゥン音を高性能にした感じ。ピュアではない。っぱHD650よ。」といった内容です。 トータルでの再生時間は 23:00 2024/09/23(4524時間)-0:08 2025/01/07_7043-3026時間_13時間のランダム再生,3013時間の1曲(sand storm)リピートエージング,4017時間のランダム再生 トータルで7000時間越え。3013時間の1曲(sand storm)リピートエージングをしていたので、音が良くなるのに時間が掛かってしまった。音が良くなり始めたのも、シャッフル再生開始後600時間を超えてから。これで初めからシャッフル再生で4000時間再生したのと変わらないくらいの音質になったんじゃないだろうか。たぶん。 テンプレ評価すると (※K812と比較して)傾向は基本的な音調はニュートラルだが低音ブーストタイプ。ニュートラル+低音ブーストと言った感じ。詰まり感なし。閉塞感ややほんのわずかにあり。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから2.75歩ほど超えていきている。解像度はK812(6985時間ランダム再生+2519時間の通常の再生エージング,+1610段)の198%、3187段ってところかな。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) あとは、以前書いた通りであまり書くことないかな。音楽性も高いけど、このくらいのポテンシャル(再現性)なら、まぁまぁ順当な感じです。 あえてこのヘッドホンの欠点を言うと過度にブーストした低音は好きになれない。ややブーミー気味だし、「こういった個性的なのがゾネホンだし、それが良い」て人もいるんだろうけど、個人的には良いとは思えない。 ※評価基準について Fidelio X3のレビューでも書いているのですが、上の「詰まり感なし。閉塞感ややほんのわずかにあり。抑圧感なし。音色はすごく良い。」という評価はあくまでK812と比べての話です。これより上の音質のSRH1540となら抑圧感や閉塞感を感じるというかモゴモゴ感のある音。SRH1540は製作中のSound Improver 4のテストに使っているので、比較するのはフェアではないと思います。ヘッドホンの素の性能だとSRH1540はnightowl carbonと互角と評価しているので、K812やnighthawk carbonとどっこいレベルと考えて良いでしょう。 フェアでないと言いつつも日常的に使っているのがSRH1540とER4SRで、それが標準になってしまっているので、無意識に比べてしまって、評価が辛くなってしまう。解像度的には5600段前後、K812の3倍ちょっと。比べるとAMとFMくらいの差がある。Signature PUREと比べるとそこまでの差はないけどね。K812は音がくすんでいるし、細部が聞こえないし、音に躍動感がない。HD650の記事の記事で、20点という評価を付けたけど、解像度基準で言うとK812が20点ならSRH1540は70点くらい付けないとおかしいってことになってしまう。たしかに音質の基準は解像度だけではありませんが、音質を上げる作業て出力波形を原音に近づける作業なので、それがきちんとできていれば解像度以外も勝手に改善していきます。癖も勝手に抜けるので音質が上がれば上がるほど、個性のない当たり前の音が出ている感じになる。 で、K812を20点とするならSRH1540が70点。Sound Improverでやっているのは振動板の改質であって、根本的に素材自体を弄ったわけではないし、ケーブルも標準の3芯のままだからね。SRH1540自体に改善余地がたくさんあるのに70点も取れるわけないだろう。つまりK812が20点という基準が甘すぎる。K812はかつてはHD800,T1と並んでハイエンドヘッドホン御三家の一つだったので、それに10点とか15点付けるのはどうなの?と思ったので忖度をして甘めに点数付けたんだけど、すでに綻びが出てしまった。忖度はするものじゃないね。もっと自分の感覚に合った点数を付けるならK812は10点が良いとこだろう。Signature PUREは20点。別に理論的な根拠があるわけでなく、単純に私のフィーリングなんですけど。 では「K812は10点」を基準にしてK812を10倍、Signature PUREを5倍音良くしたら原音と言えるレベルになるかと言われたらそれでも少し足りないと思います。ですが、この点数はヘッドホンの予想限界性能を100点としているだけで、アンプやDACは含みません。また録音技術の問題もあります。なので仮に100点のヘッドホンが存在したとして真の意味で原音に到達することはないでしょう。そもそもぺらい振動板2個で自然界の音を完全再現するには無理がある。。。とは言えK812の10倍くらい音良ければ原音と見紛うレベルの音が出るのは間違いないでしょう。この基準は将来的に修正する可能性はあるし、必要があれば修正すればいいのだけど、暫定の目標地点としては悪くないところだと思う。 Signature PUREは原音忠実基準の絶対評価でなら20点くらいの音。それが高いか低いかは人それぞれだけど、相対評価でAとBを比べてAのほうが良い、Aはヘッドホン製品群の中でこれくらいの位置づけとするよりも、絶対評価で原音忠実基準からしてこれくらいの位置づけとした方が、Signature PUREの場合しっくりくるんじゃないかと感じた。 それではSignature PUREのまとめに入ると ■Signature PURE まとめ Signature PUREはとても優秀なヘッドホンだ。原音忠実基準の絶対評価でなら20点くらいの音。「え?原音の20%程度しか引き出せないの?」と思われるかもしれないが、K812やnighthawk carbonが10点くらいでわちゃわちゃやっているレベルなので相対的に言えば群を抜いて優秀なヘッドホンと言って良い。ところが、以前書いたように「Signature PUREはみんなが買うべきヘッドホンだ。」とお勧めできるか?と言えば、必ずしもそうは言えないという結論に達してしまった。 HD650の記事 でも「HD650はみんなが買うべきヘッドホンだ。」と書いたがそれも撤回させてもらうことにする。 私個人はHD650は完璧ではないが、すごく良い音だと思うし、他のヘッドホンとの相対的な評価しかしないなら、求める音質レベルが「他よりちょっと優れていればいい」程度の物なら「HD650はみんなが買うべきヘッドホンだ。」と言ってしまっても問題ないとも思うのだが、「みんな」という言葉の厳密性を重視するなら、あのレベルの音では誰もが良い音と認めるレベルではないだろうということ。 「おまえ、鳴らしきったHD650は誰が聴いても良い音とか言ってたじゃん?」と突っ込まれると思うのだが、そういう考えに至った理由は、音の到達度に応じて点数を付けてみて、その点数があまりにも低すぎるということ。例えば80点の音と言われるHD600もK812と比べるなら80点と言えなくないのですが、原音忠実を基準にするなら10倍くらい音良くしてようやく80点の音と言えるくらいのレベル。 原音忠実基準の100点の音(到達可能かは分からないが理想的なレベルの音)からすると、10点も20点も30点もどれもどんぐりの背比べレベルでありましょう。「良い音というのは誰にとっても良い音」なのですが、そうならないのは現状のレベルがあまりにも低いから。10点,20点,30点だからそりゃ穴(欠点)だらけだ。10点の音と30点の音では確かに圧倒的な差がある。端的に言うとAMラジオとFMラジオくらいの差がある。それでも、30点の音でもなお70点分の穴(欠点)が存在するわけで。。。そうなってくると「誰にとっても良い音」とは言えなくなってくる。 なので、実際に聴いて気になる穴(欠点)が少ないものを使うのが一番良いという結論に達してしまった。認知力は人それぞれだし、すべての欠点を認知できる人間はおそらく存在しないでしょう。なので、ある人が認知できる欠点が、他の人には分からない。また、その逆も然りです。認知できない欠点はその人にとっては無いに等しいので、完璧でなくても満足できるヘッドホンが存在する可能性もあるかもしれません。どうせ現実的にはどのヘッドホンも欠点を持っているわけで、その欠点を認知できない、もしくは許容できるものを使うのが良いというわけです。 そうなってくると、最適なヘッドホンは人それぞれということになってきますが、これは好みの問題ではありません。そのヘッドホンの欠点が分かるか分からないか、気になるか気にならないかの違いです。あくまで頂点は一つであって、究極的に言ってしまうと「良い音というのは誰にとっても良い音」なのです。ただ現実がそのレベルに全然達していないのです。 なぜこういうことを書くかというと、Signature PUREは褒めてはいるけど、私にとっては最適なヘッドホンではなかったということです。 HD650とSignature PUREのどっちか選べと言われたら間違いなくHD650を選びます。 確かに解像度と音色の面でいうと、Signature PUREの方が優れているでしょう。ただ欠点がないわけではありません。 ■Signature PUREの欠点その1 まずSignature PUREは他のヘッドホンと比べると横の広がりに乏しいです。楽器の定位する位置が大きく違うわけではないんだけど、耳の真横に壁(密閉の壁とは違う)がそびえていて音が広がっていかないような感覚。言い換えるとハウジングより外側、左右真横の空間の空気感とか雰囲気成分を意図的に消し去ったような鳴り方。それでいて前方の響き成分は消えていません。他のヘッドホンにはない感覚です。これが微妙な閉塞感を生んでいます。ずっと聴いていると気にならなくなってきますが、他のヘッドホンと比べて劣っている点ではあります。S-Logicの弊害なのかは他のS-Logic機を持っていないので不明です。でも再生能力に不足があるとは思えないのに、こういう問題が出るのはユニット以外に構造的な問題があるからでないか?と勘ぐってしまう。 上では「音場の違いは微粒子レベルの違いだから気にする必要なし!!!(キリッ)」と書きましたが、比べて違いが認知できてしまうと微粒子レベルの違いでも気になるようです。cmにすると2cm程度の違いです。大した違いではない。でも比べるとcmの問題でなく閉塞感があるのが分かってしまう。楽器の定位する位置の問題でなく、ハウジングより左右外側の響き成分が消失してしまっているのが良くないのだろう。 ※ただし、広がり感の乏しさも閉塞感もK812やnighthawk carbonと比べてなら、劣ってはいるが、そこまで気になるものでもないし、この辺りは無意識にSRH1540と比べてしまっていて、評価が厳しくなっているのもあると思う。 ■Signature PUREの欠点その2 これが一番大きいのですが、Signature PUREは押しつけがましい音です。「どうだ?かっこいいだろう?」と胸倉つかんで聴かせてくる感じ。15分くらい使ったらもういいやとなってしまう。原音忠実基準で言うと他のヘッドホンよりもロスが少なく細かいニュアンスも拾うので、そういう意味では、より自然で忠実度の高い音と言えるのですが、この作為的な演出は自然とは言えないでしょう。音楽が寄り添うような感じではなく、ヤンキー車がドゥンドゥン鳴らしている騒音を聴かされている感じ。購入直後のころは比較のために他のヘッドホンととっかえひっかえしたり、短時間しか使ってなかったのことが多かったので、あまり感じなかったのですが、通しで長時間聴くときつくなってくる。サブでたまに聴くなら良いけど、メインで使おうとはちっとも思わない。モニターはモニターでもDJモニターと捉えたほうが良いでしょう。ただし恐ろしく高性能なDJモニター。 ■音以外だと、 ・スイーベル機構が付いたモニタータイプの形態自体があまり好きじゃない。 ・機械としての完成度はHD650には敵わない。(これはどのヘッドホンにも言えることだが) ・ケーブル片出しが気に入らない。 ・Signature PUREを使うより、HD650を鳴らしきったほうがオーディオとしては楽しい。やはりHD650は私にとっては特別なヘッドホン。 と言ったところです。 ポテンシャルはあるのは認めるけど、なぜかあまり好きにはなれなかったという感じでしょうか。 Signature PUREとHD650のどちらか選べと言われたら間違いなくHD650を選びますが、Signature PUREとnighthawk carbonならnighthawk carbon。Signature PUREとFidelio X3なら(僅差で)Fidelio X3。Signature PUREとK812ならSignature PURE。と言った感じなので、SRH1540などsound improverのテストで使っているヘッドホンを除いたお気に入り度で言うと、4番手くらいの位置づけかな。 もしかしたら私は鳴らすのに苦労するヘッドホンの方が愛着が湧きやすいのかもしれません。 あと、Fidelio X3をSignature PUREよりお気に入りとしているけど、Fidelio X3はあれだけぶっ叩いていても、なんだかんだ音色が良いからね。中途半端に良いから余計にがっかりするんだけど。それでも(僅差だけど)Signature PUREよりはお気に入りだ。原音に近いのはSignature PUREの方だし、人に勧めるならSignature PUREの方。だけど、聴いててなぜかべた褒めする気にはなれない音。Fidelio X3を聴くと確かにSignature PUREより音ぼやけているし、解像度も低いし、色づけも多いのだが、Signature PUREにあった硬さがほぐれて、肩の力を抜いてリラックスして聴ける音になっている。Signature PUREは肩ひじ張って演奏している感じ。また音色の正しさ、色づけの少なさではSignature PUREの方が優れているが、階調感ではFidelio X3の方が優れている。聴き比べるとFidelio X3も捨てたもんじゃないと思えてくる。 というわけで、Signature PUREの音楽性が素晴らしいと認めながらも、結局、その音楽性の違いで私とはそりが合わなかった。私としてはもっと純粋な再現性(音楽性)が欲しいところ。そしてSignature PUREは「HD650の特別」を打ち崩すほどではなかったのですが、そうはいってもHD650の半額で買えますからね。再生環境も比較的選ばないし、しかもドイツ製。これは買う価値のあるヘッドホンですよ。無敵と言っても良いレベルのコストパフォーマンス。ただしDJモニターとして買いましょう。
2024/03/09 執筆
2024/03/12 公開
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